五行説発祥の中国では夏の終わりの湿度の上がる時期を『長夏』と呼びます。
一方、日本では春から夏にかけての湿度の上がる梅雨の時期を『長夏』とします。
肌寒さが終わり、『氣』がゆるみやすいこの時期は、湿気(湿邪)が増える時期といえます。
古代中国では、自然界のあらゆるものは5つの性質(火・水・木・金・土)からなると解釈しました。
これらの5つの性質が『お互いに関係しあい、その強さやバランスによって変化し、循環する』
と考え、これを、自然、人間、社会においても取り入れ、様々な思想が確立されました。
東洋医学でもこれと同様に、5つの要素がお互い関係しあってバランスをとっていると考えます。
このなかでも、この梅雨『長夏』の時期に相当するのが
『脾(ひ)』
です。
『脾』は脾臓(ひぞう)のほか、消化・吸収に関係する胃や腸の働きも含めます。また、脾臓と膵臓、胃は全て近接する臓器です。
『脾』が弱る生活習慣は
『食べ過ぎ・飲み過ぎ』
です。
消化管に使うエネルギーが過剰になると、日中の活動低下につながります。
五行説では『身体を冷やすと脾が弱る』と言われます。
『脾が弱ると絵にあるように⭐︎マークの矢印の先の『腎が弱る』ことにつながります。腎臓は尿を作る臓器ですので、水はけが悪く、身体に水が溜まりやすく、むくみの原因になったり、皮膚のリンパの流れが悪くなることで湿疹や皮膚のトラブルも起こします。
特に、湿気が高いこの時期は、汗をかきにくいので、身体の中の水はよどみやすい(鬱滞しやすい)状態になります。身体も重だるくなるわけです。
汗をかきにくいので、熱がこもりやすく、上がってくる気温につられて冷たい食べ物やビールなどの飲み物、身体を冷やす砂糖などが欲しくなるのは自然な流れですが、結果的に内臓を冷やしてしまうため、消化の力が落ちて『脾』を弱らせる原因になります。
これらの悪循環に入る前にできること、体内の湿邪を取り除く方法は以下です。
①動いて汗をかく
②腹八分目を心がける
③冷たいもの、甘いものの摂取はほどほどに
するのが良いでしょう。
① 軽い運動で発汗を促し、血流をよくし体温をあげることは『脾』を強める方法です。
日常生活に『有酸素運動』を取り入れることは、横隔膜を動かし、呼吸筋、腹筋が鍛え、筋肉量を維持することで日常的に糖質摂取後の急激な血糖の上昇を抑えることができます。また、運動はイラストにある『脾』のひとつ手前の『心』を鍛えることになり、『脾』の働きを助けます。心拍数を軽く上げることに慣れていれば、緊張によるストレスに対しても落ち着いて対応できる余裕が生まれます。
(→本編『運動』の項参照ください。)
また、内臓を温める、『半身浴』で汗をかくのも効果的です。
②『脾』の働きを高める食材は『消化を助ける』『利尿作用のある』食べ物です。
消化を助ける
ネギ
生姜
紫蘇(しそ)
パセリ
セロリ
利尿作用のある
スイカ
冬瓜
アスパラガス
とうもろこし(ひげの部分)
緑豆
はと麦
はおすすめです。
これらは、カリウムが豊富な食材です。
溜まった水分と余分な塩分(ナトリウム)を排出する効果があります。
また、『脾』と関連する感覚は『味覚』
一口ひとくちよく噛んで、食感を楽しみ、匂いを楽しみ、味覚、
そしてなにより『心』を満足させましょう。
湿気の多い時期にも、軽い有酸素運動や半身浴で汗をかき、身体を温めリラックス。
利尿効果の高い、香りのある旬の野菜をゆっくりよく噛んで味覚を楽しむ。
一見ごく普通の生活ですが、忙しい現代人は忘れがちです。
快適に梅雨を乗り切るこれらの方法を意識して試してみて下さい。