中国最古の医学書『黄帝内経』では、毎日どの時間にどの内臓がよく働くかを『子午流注』という概念で説明しています。
1日24時間を12個に区切り、それぞれの時間と良く働く主要な臓器を示しています。
例えば、
夜11時〜夜1時は胆嚢が一番働く時間。胆汁は食べた脂肪、脂溶性ビタミンを乳化して、分解、吸収します。この働きを良くするためにはこの時間に体を休めている必要があります。
胆嚢炎の患者さんや胆石持ちの方が夕食後に発作を起こして救急外来に来られるのもこの時間帯が多い。
夜1時〜3時は肝臓の時間です。肝臓は主に解毒とタンパク合成を行う重要な臓器です。全身の血流が効率よく肝臓に集まって欲しい時間です。その昔、まだ抗ウイルス薬の無かった時代、肝炎は『寝て治す病気』といわれました。起きているよりも体を横にすることで肝臓への血流(門脈血流)は1.5倍以上に増加します。
つまり、この時間帯に飲み会の二次会や寝ないでお酒を飲んでいると肝臓には負担が大きい。
『子午流経』よると、朝5−9時は前の時間に活発になった肺からのエネルギーが大腸に届き、正常であれば大便がしっかり出る時間です。
7-9時は胃経の気血(エネルギー)が集中しているため、食物の消化がもっとも盛んで、朝食の消化をしっかり行うことができます。
9-11時の脾経の時間には、消化、吸収、排泄のバランスをとり、エネルギーを生み出すことができるとあります。
1日で一番活動に適している時間です。
13−15時の小腸経の時間は胃から送られてきた食物が小腸で吸収されることになります。
副腎機能のまだ弱い子供たちはこの時間にお昼寝をします。
大人でも体調の悪いときや、体力のない方、疲れやすい方、副腎疲労の方はこの時間に短い昼寝をするのは効果的です。
現代の食事はタンパク質や油が昔より多く、また、季節や風土に合わない食べ物、もともと自然には本来なかったものまで様々で、昔よりももっと消化に負担がかかるものを身体が引き受けています。
商業効果も手伝って、身体よりも頭で食べたくなるものがたくさんあります。また、昔よりもずいぶん食べすぎてしまう誘惑がたくさんあります。お酒を飲み過ぎれば夜の1−3時に働くだけでは追いつかず、次の日までアルコールが体内に残ることは想像できます。
消化するのにかかる時間は野菜や果物で1−2時間、炭水化物は10時間弱、動物性タンパク質は10−24時間かかります。
これもそれぞれの咀嚼の程度や量によってさらに長くなることもあります。
健気に働く身体の臓器をいたわる食事や生活スタイルを、是非心がけたいものです。
どの臓器がどの時間に、、、はあくまでも参考で、とにかく暴飲暴食をせず夜しっかり寝れば、寝ている間にしっかり臓器が働いてくれているという有り難い事実があるということです。
どの養生法でも言われることは、
『夜22時以降は全身を休ませるため睡眠をしっかりとる必要があること』
『食べすぎないこと』
です。当たり前だけど忘れがち。他は出来なくてもこれだけでも目指してみましょう。
『お腹が空いた時に、腹八分目を有り難くいただき、早く寝る』という昔ながらの習慣を大切にしたいものです。