病院で行われるうつ病の診断は『DSM−5』という、米国精神医学会の公式診断基準9つのうち、いくつが当てはまるか、で診断されます。
該当する項目数とその深刻さ、機能障害の度合いによって規定されます。
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抑うつ気分
興味や喜びの減退
体重の増減(食事制限なしで)
不眠
焦燥感や思考の停止
疲労感、無気力
無価値感や罪責感
思考力や集中力の減退
自殺願望
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これらの9項目の症状が、ほぼ毎日、2週間以上続くことが条件です。(たった2週間です。)
5個を超えない程度で日常生活、家事や仕事はなんとか可能な状態を軽症、5個をはるかに超えるものを重症、
その中間を中等度、と診断します。
『自分には関係ないな』と思った方は大丈夫。
『そんなに簡単に診断されるなら私って。。。。』と思った方は続きを読み進めてください。
毎日の生活で気分が落ち込んだり、不安に思ったりすることは誰でもよくあります。
一日中忙しかったり、身体が疲れてしまった日は夕方には『疲れたなー』とついつい言ってしまいます。
そして、仕事が残ったり、自分の目標やノルマを達成できなかったりすることは誰にでもあることです。
そんな時に、「ダメだなー」と、自分を責めたり『自分を否定する感情』を持つと、脳がそれに反応します。
『不快・辛い』と感じると脳の苦痛系が働いて、コルチゾールがどんどん必要になります。同様に、肉体的にも消耗しているため、暴飲暴食に繋がったり、それを補うための『ドーパミン』や『アドレナリン』を求めて夜遅くまでネットサーフィンやゲーム、何か脳に刺激となるものを追いかけ続けると、いつかコルチゾールは底をついてしまいます。
簡単にうつ病の診断基準を満たしてしまいます。
軽症のうつ病に対する抗うつ薬の有効性については科学的根拠は確立されていません。
軽症うつ病では、効果、副作用ともにプラセボと同様であったという報告がなされています。1)2)3)
つまり、軽症のうつ病には薬は必ずしも必要ない。ということです。
コルチゾールまみれの疲れきった脳で、なんとなく体調が悪いと病院へ行くと、同情的な優しい先生は抗うつ薬を処方してしまうかもしれません。根本的な解決策にはなっていないためそのまま薬を継続することになります。
どこで食い止まるか。
『睡眠』でリセットできます。(→本編『睡眠』)
そして、『考え方を変える』ことも大切です。(→本編『ストレス対策』)
今日できなかったことや失敗を後悔するのではなく、出来なかったことも出来なかったという認識ではなく
”『明日からの目標』に書き換える”
ということが大切です。
後悔して悩むという行為は『そういう自分だ』という認識を自分に強く擦り込ませる行為です。
以前に、初老の女性の方の胃カメラの定期検診をさせていただいたことがあります。家族に胃がんの方がおられて、それだけが心配で毎年検診を受けておられました。
胃のなかはピロリ菌のいない(慢性胃炎がない)若者のような胃粘膜で、実に惚れ惚れしました。
すかさず『生活で何か気をつけていることはありますか?』と伺ったところ、『何も悩まないことです。』と即答。
仕事ではたくさんの人と接して、指導的な立場を取られることも多いその方は、人間関係で嫌なことがあっても『早く寝て、出来るだけ忘れる』と仰っていました。苦痛系を刺激しない生活スタイルです。
彼女が胃がんになる確率は0%とお伝えして、『忘れられない悩み事と胃の痛みがある時だけ検査を受けてください、毎年の検診は必要ないですよ。』とお話ししました。
『悩まない』と決めることはとても素晴らしい健康法の一つです。
薬のお世話になる前に、今から是非、『悩まない』と決断しましょう。
1)Kirsh et al, "Initial severity and antidepressant benefits: a meta-analysis of data submitted to the Food and Drug Administration. PLoS Med.2008 Feb;5(2)e45. doi: 10.1371
2)Rief W et al."Mete-analysis of the placebo response in antidepressant trials." J Affect Disordering.2009 Nov; 118(1-3);1-8.doi;10.1016.PMID19246102
3)Fourniier J et al, "Antidepressant drug effects and depression severity: a patient-level meta-analysis." JAMA.2010 Jan 6; 303(1):47-53.doi 10.1001.PMID20051569